大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和46年(オ)74号 判決 1972年3月21日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人戸毛亮蔵の上告理由について。

所論の点に関し、被上告人は農薬の製造業者であり、被上告人の訴外奈良化学農薬資材株式会社に対する債権は右農薬の売掛代金であるから、右債権は、民法一七三条一号に該当し、訴外会社がその債務を認めて一部の代物弁済をした昭和三五年七月一六日より二年の経過により消滅時効が完成して消滅するものというべきであるが、右時効の完成前である昭和三六年三月一三日、被上告人は、上告人に対し、右売掛代金の保証債務に基づく履行請求権につき、奈良地方裁判所に破産宣告の申立をし、該事件が現に同裁判所に係属しているものであるところ、該申立は、裁判上の請求として、時効中断の効力を有するものと認めるのが相当であり、そして、主たる債務者が保証人と連帯して債務を負担する場合においては、連帯債務者に関する民法四三四条の規定が適用されるので(同法四五八条)、被上告人が連帯保証人である上告人に対してした右破産宣告の申立により、主債務者たる訴外会社に対する本件売掛代金債権の消滅時効も同時に中断され、しかも、右中断の効力は、該破産手続終了まで継続するから、上告人の時効の抗弁は理由がないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認するに足り(当裁判所昭和三五年(オ)第六五五号同年一二月二七日第一小法廷判決、民集一四巻一四号三二五三頁参照)、原判決に所論の違法はない。それゆえ、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、九八条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 天野武一 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 関根小郷 裁判官 坂本吉勝)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例